今期一番の寒気に包まれた山裾の小さな職場。
知的障害者の生活介護事業所。
12/1(土)恒例の
餅つき大会だ。

多くの保護者も参加し、利用者、職員とともに力を合わせる。
園の小さな駐車場に石臼を据え、周りを上着を羽織った見学の利用者が固める。
蒸しあがった熱々のもち米を臼に投げ入れ、三人が順序良く杵をついていく。
杵つきの主力は、おしなべて高齢といえるマイクロバスの運転手さんだ。
利用者と職員が「1,2,3,ハイ!」と、杵つきのリズムに合わせて大きな声を唱和する。
手拍子が響く。
「ハイ!」のタイミングで石臼横に陣取った職員が、間隙を縫う。
軍手をはめた手で、もち米をすばやく捏ねる。湯気が上がる。
隣では、鉄釜の蒸気に煽られた数段重ねの蒸篭の中で、もち米が行儀よく順番待ちをする。
介助の手を沿えてもらいながら、利用者も杵を肩まで持ち上げ、楽しそうに振り下ろす。
ぺった。ぺった。ぺった。
つきたての餅は、食堂に陣取る母親達と利用者のもとに運ばれ、せっせと丸められていく。
餅つきを間近で見るなど何十年ぶりだろう。
失業中は季節感なぞどこかに押しやっていた。
そういえば師走なんだなと、しみじみ思っていると、私の名がまた呼ばれる。
本日もまた情緒が不安定なXさん、朝からなにやら不穏だ。
独語が多く、多動も顕著だ。
当園のあらゆる箇所が常時厳重に施錠されているのは、Xさん対策なのだ。
人のいる事務所や食堂入るにも、いちいち開錠する必要がある。
いつもと違う雰囲気というものに、自閉症者はきわめて敏感だ。
徘徊、器物損壊、他害に対する見守り要員としての名誉ある出動命令。
マンツーマンディフェンス。
行かねばならぬ。
ベンチに腰掛けて餅つきを見学しているPさん
(左四肢麻痺、てんかんがあり、常時介助見守りの必要な方)の補助を、
別の職員に、目で、引き継いで、
Xさんのもとへ、特命を帯びた私は館内へと歩を進める。
ふっと小さく嘆息する。
長い一日になりそうだ。