BILA KU INGAT   忘れ残りのインドネシア

おとっつあんの忘れ残りの記

院長回診はマンガか!


「老健」(介護老人保健施設)の特徴のひとつに、「医療」との距離の近さがある。

介護職と、多くの医療従事者との協働で利用者のケアに当たる。

日々のリハビリは、理学療法士と作業療法士がその任を果たし、
施設内に併設の「デイサービス(デイケア)」の通所者も、その対象となっている。

介護職と直に接する機会が多いのは、無論看護師である。
入浴介助や食事介助を協働することも多い。
シフトに組み込まれた看護師と介護職が、その日の当該フロアの入所者の処遇を担う。

この職場で初めて男性看護師に出会ったが、
この、「看護師」という職もなかなかに大変な仕事だなと思う。

院長回診」なるものが定期にある。

この日は、介護・看護部門の部長や主任の面々は、
ピリピリと神経を張り巡らし、
院長の厳しいチェックの餌食になるまいと顔色が変わる。

にしても、院長とはなんたる絶大な権力者なのだ。

猫も杓子もその前にひれ伏し、恭順を誓う。

このピラミッドの構図にはほんとに唖然とする。

みながその顔色をうかがい、遺漏なきよう、台風一過を待っている。

これがマンガのようで滑稽に写る。

一方で確かに(この院長はまだ30代らしいが)、

この院長は傲岸不遜の雰囲気を纏っているので、これまたマンガなのだ。

朝のミーティングでは「院長回診」を恙無く終えるための、
神経質なくらいに注意事項が徹底される。

「今日は院長回診があるので、~は厳禁!」なぞいうしょうもないお達し…。

虚飾と保身に満ちたダブルスタンダード。

「そんなん、常日頃やっとけよ」と、私は心のなかで思う。

付け焼刃的にやるから、徹底しない。

入所者にとってはいい迷惑だろう。

やれやれ 


   

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昼休みの一局

  

この職場を「卒業」するのもそう遠くないと考える。
  
    
 
  
それはさておき。
昼休みに上階のフロアをぶらぶら歩いていたら、Iさんが徘徊している。
  
他の利用者の大半は、食後の一服時ということで、自室ベッドで臥床しているのだが。
  
Iさんは「食」にたいする欲求が高く、
無断で他者の居室や事務所まで入って、お菓子を失敬することもある。
四六時中手にしたコップにお茶を入れて飲んでいる。
意に沿わない状況に出くわすと、暴力行為に及ぶこともあるらしい。
他者とのトラブルは茶飯事だ。

  
ふと思い立って、「将棋をしよう」とIさんを誘ってみると、素直に応じてくれた。
  
学習クラブの合間なぞに、幾度かIさんが「指して」いるのを見たことがあった。

  
マグネット将棋盤を間に挟んでいざ開局。
Iさんの棋風は、攻撃重視の勢いがあるものだった。
こちらも久々に指したので、ミスの連発で、スリリングな展開となる。

  
当施設では要警戒パーソンと目されるIさんだが、
垣間見せる素直さや、将棋や学習ドリル時の集中力は、実に魅力的だ。
  
      
どのような背景で入所したのかは知らない。
      
      私が知っているのは、Iさんが生活保護の受給者であるということだけだ。

      いったいどのような人生を歩んできたのだろう…。

      日々なにを思い、ここで起居しているのだろう…。

 
    「負けたな。もう一回しよう。」 


    潔く負けを認めたIさんが、気づくと、本日三局目に向け駒を並び始めた。

    
    

    
   

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やまぶきダッシュ -3-

案内板の前に、Aさんを残して、ここから私は猛然と走り出す。

喫茶・土産売り場兼案内所風の館内に入って、
ようやく探し当てた登園の係員にヤマブキの所在を尋ねる。

口頭ではそのエリアが分からないので、
その係員に付き添ってもらってヤマブキエリアまで小走りに。

焦りが募る。間に合うか。

幸い案内板からはそう遠くない、小高い丘を下った崖際にヤマブキは静かに咲いていた。 

思ったより小さな花だった。

かわいらしい花だった。

「ありましたよ!」
せわしく息を継ぎながら、今度は、Aさんの車イスを押しながらのダッシュだ。

Aさん頼むぞ、車椅子から落ちないでね!

ここでAさんを落とすようなことがあったら、私の即日解雇は決定的だ。

私とAさんの猛ダッシュは、傍から見ると、かなりの滑稽さを放っていただろう。



無事到着。


「これがヤマブキか。想像通りきれいな花じゃな。」

Aさんは感慨深げにヤマブキに視線を注いだ後、その花を手で触って愛でている。

喧騒が嘘のように。

時間が止まったような人生の凪。

降りそそぐ春の午後の陽光と、

車椅子を押すおっさんとおじいさんと、オレンジ色のヤマブキの花。


Aさんは、

花をひとつポチンと摘み取りポケットに入れて、

私に向かっていたずらっ子のように、ニコと微笑んだ。 


       -完-  



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やまぶきダッシュ -2-

曰く

「江戸城を造った太田道灌にまつわる和歌のエピソードにヤマブキが出てくるんじゃが。

七重八重…。

その花は、まだ見たことがない。ここにあるじゃろか。」

   学識豊かで向学心に富むAさん、謹厳実直の人である。
   普段も自室のベッドの上で、歴史やら何やら文献に目を通しながら、メモをとっている。


言外に強い希望を感じた。

事実案内板に目を移すと、

ヤマブキ』とあり、開花時期を示したグラフは、この時期がそのど真ん中にある。

さすがはAさん、いい加減なことは言わない。

   
    あるのかヤマブキ。

    今から探せるのか。

    あったとしてもほんとうに咲いているのか。

    そこまで車イスで見に行く時間が捻出できるのか。


帰る時間が迫っているので、逡巡したが、

この機会を逃したらもう生涯見ることができないかもしれぬと、

なにやら責任みたいなものを感じて、

他の職員の冷たい視線とダメだしを覚悟した。

他の職員に、一言断りを入れるのも面倒だし、「不可」との返答の可能性も大だ。




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やまぶきダッシュ -1-

   

過日、利用者数名と外出の機会を得た。

近隣の「植物園」へ。

数台の1BOXカーに人と車イスを分乗して。

山あいにあるこじんまりとした植物園。動物園も隣にある。

季節柄、目を引く草花はさほど多くはないが、

園周辺にある芝桜の彩りは、施設の日常にはない明るさを纏っている。

屋外の澄んだ空気と太陽、眼下に開けるパノラマは、心を洗ってくれる。

利用者の乗る車椅子を押しながら、軽く園内を回って、そろそろ帰ろうかという時。

私の押す車椅子に乗るAさんが「ヤマブキはあるかな?」と、誰とはなしに口にする。

あかん。

このタイミングでそんなこと言わないで。

と、心を鬼にして軽く流そうと思ったが、

Aさんは園内の案内看板の前にじっと張り付いて、「草花木々一覧」なるものに見入っている。






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殺伐たる日常に染まりたくはなし

   初めて浴場での入浴介助をする。

   心の準備もある程度できていたが、

   介助中の利用者の脱糞にはやはりとまどった。

   この時期でも、浴場での介助は「暑くないことはない」が、

   他のCW(ケアワーカー)が言うほどでもないと感じる。


   それにしても、信じられないくらいに一日が長い。


   業務自体が(あまり体力のない私にとっては)重労働であることもあるが、
   この施設の体質なるものに、染まりたくはないと常時思っているからだろう。

   運営母体の医療法人はもとより、
   「介護部門」の組織・処遇の質の低さには、日々唖然とするばかりだ。 

   
   この施設の職員でありながら、

   この施設の利用者を気の毒に思ってしまうのだ。
   
 
   
   恐るべきは、

   他の職員の処遇を見るに、それは「虐待やろ」と思える場面が少なくないことだ。 
      
      利用者の人権を無視したかのような、
      粗野で下品な言葉遣いや、
      差別的、威圧的態度、潜在的なネグレクト…

   
   この施設での、この実態を、
   利用者の家族が目の当たりにしたら、どのように感じるだろうか。

   「心ある職員はみな辞めていく」と

   いみじくも語る洗濯場のベテランおばさん職員の言葉が、

   一心不乱にオシメを畳んでいる私の心にすっと沁みた春の夕刻である。

        
  
       
        

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修羅場と化した脱衣場で僕は泣きそうになっている-5-

  謙虚に反省しなければいけません。

  
  ただ。

  失敗した自分を責めても仕方がありません。

  この失敗から学ばなければいけません。

  この経験は僕にとって、しばしはトラウマになるような予感がします。


  とすれば、このトラウマを自覚して、

  根気強く付き合っていこうと思う。

 



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修羅場と化した脱衣場で僕は泣きそうになっている-4-

左片麻痺のこの利用者の脱衣場での移乗は初めてでした。

慎重を期すべきでした。

立位にした際、彼の左半身(=僕の身体の右側)から受ける右後方への重圧が、

僕の想像を超えていたこと、経験値の低い僕の身体の位置取りの拙さ等が原因だったと思います。

僕の襟足の鬱血と痛みが引くのには、ちょうど一週間かかりました。

今思えば、これでも打ち所が良かったのだと思います。

たまたま脱衣場の隅で介助をしていたので、僕の右側には、壁に設えられたロッカーがありました。

利用者に乗りかかられるように、

(利用者に手を添えたまま)、受け身なしの体勢での背面方向への転倒です。

床面から40cmほどの所の、最下部の棚板がなければ、

受け身なしで、直接床面へ後頭部から打ち付けられていたはずです。

利用者に、たいしたけががなくて、ほんとうによかったです。





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修羅場と化した脱衣場で僕は泣きそうになっている-3-

不幸中の幸いでした。

ロッカー(木製)の棚板によってもたらされた、

転倒による衝撃の最大波を受け止めたのは、僕の後頭部(襟足付近)でした。

僕の身体に乗りかかるような体勢で、利用者も床面に倒れましたが、

僕の身体がクッション代わりとなったためか、ほとんどけがはありませんでした。


双方の動揺が表面上は薄らいだと思われた頃、

「気にするな」と新米の僕に声かけさえしてくれました。

失態を演じた我が身の不明を恥じ入るとともに、

怖く痛い思いをさせた、この利用者に対する申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。



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修羅場と化した脱衣場で僕は泣きそうになっている-2-

湯上りの男性利用者を車イスに移乗しようと、

その身体を持ち上げた際、バランスを崩しました。

利用者を抱えたまま右後方へ転倒しました。

ふわっと宙に浮いたような感触が、僕自身には信じがたく、瞬間事情が飲み込めません。

次に襲ってきたのは、

ドスンという襲撃音と、襟足周辺、左肩甲骨辺りの猛烈な痛み、

利用者の「痛い!」という呻き、そして大変なことをしてしまったという恐怖でした。

利用者にけがはないのか。

血の気が引くとはこのことです。




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修羅場と化した脱衣場で僕は泣きそうになっている-1-

入浴介助で、気力・体力の大部分を殺がれます。


といっても新米の僕は浴場での洗身・洗髪介助ではなく、脱衣介助の方の要員です。


大浴場は週4日開けられ、湯気の充満した脱衣場で、


次々にやってくる入所者の脱衣、および、湯上り後の着衣を介助していきます。


この入浴介助だけで、午前中の1.5~2.0時間を要します。


ここで先般、


肝を冷やす思いをしました。



    


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身内を自信をもって預けられるかという視点-2-

おそらく長年に培われた組織風土のようなものだろう。

利用者の家族が来所した際に、粗相がないように、
体裁を整えるに躍起にならずとも(躍起になってもいいが)、
普段の処遇を胸を張って続ければいいだけのことだ。

家族の前では「○○ちゃん」を「○○さん」に切り替えるのか。

内なる実情を知っている施設職員が、
仮に自分の親なら、当施設に預けたいと思えるかという視点は重要だ。


   この点、2月末まで勤めていた「知的障害者更生施設」は、
   仮定の話だとしても、身内を託してもいいと思える所であった。


万一、何らかの事情で余儀なくされたとしても、
私の身内を、当施設へ預けたいと思うだろうか。


答えは、否。



とすれば、反面教師、他山の石として、ここで働く意義を再考せねばと思う。





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身内を自信をもって預けられるかという視点-1-

17日目が終了。

現時点での感想…「なんじゃこの施設は」である。

新参者の私の目には、利用者に対する処遇がぞんざいに思えて仕方ない。

利用者の呼称ひとつを挙げても、
「○○ちゃん」と馴れ馴れしげなものや(女性介護職員に多い)、
認知症で手間のかかる利用者を
(公衆の面前であってすら。況や陰では。)呼び捨てにし罵倒したり……。

   そもそも「タメ口」での利用者との会話ですら、
   私は、少なからず違和感を覚える性質(たち)である。

なんやら「上から目線」の対応が多いのだ。

もちろんすべての職員がそうではない。

しかし、これまでに私が得た感触では、
この「老健」に蔓延するは、福祉・介護職のもつべき人権意識の低さだ。







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重労働

新しい職場での勤務11日目が終了。

介護職の職業病?、噂に聞くこれが「腰痛」か。

早くもサロンシップを毎晩貼りつけるはめになった。

当施設「老健」の入所者は約100名、3F-6Fに各居室(個室と二人部屋)がある。

(病院、特別養護老人ホーム(特養)、グループホームも併設されている。)

食堂ホール・風呂・事務所が1F、リハビリ室が2F、
サービスステーション(ナースステーション)は各階で、
階段の昇降を毎日何度も繰り返す必要がある。

その上、職員の更衣室が併設病院の別棟にあり、移動だけでもかなりの距離を歩いている。
老いた我が身は、足の筋肉痛との闘いも始まった。

入所者は、大半が車椅子を使っているので、エレベータでの移動となる。
三度の食事ごとに1Fまで全員の入所者を誘導するのは、
二基のエレベータを利用しても30分はかかるようだ。

出勤直後から、中腰になって、慣れない手つきでオシメを交換する。

新米で要領の悪い私は時間がかかる。無駄な力も入る。被介助者にも気を遣う。
忘れるな、臭覚はOFFだ。
無論、被介助者への尊厳も忘れまい。

理由なき(理由あり?)怒りを露にして、
爪で顔面をひっかいてくる100歳近い女性の攻撃を片手で食い止めつつ、
「こぼれないでね」と祈りながら、下剤服用後の放出物を処理するときのドキドキ感

一人のオシメを換えただけで、マスク越しの息は上がり、じわっと汗が噴き出してくる。
(各居室は暖房がONとなり、館内のあちこちには加湿器が稼動している。)

驚いたことのひとつは、
当施設のCWには、中高年の男性もままいるということであった。

前職をリタイヤしたのち、
55歳で初めて当施設の介護職に就き、この経験を生かして、
介護福祉士、ケアマネジャーとスキルアップした現在62歳の男性もいる。
夜勤ももろともしないそのバイタリティには脱帽する。







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-おしめ交換- こんな僕でもきっと慣れると信じるぞ



介護業務に関しての苦手意識の大半が、この「排泄介助」にありました。(あります)

-失業&引きこもりseason2-の時期に受講した
※介護職員基礎研修における実習でも、「拭き取り」はしても、
幸か不幸か、実際に排便済みのオシメ交換をすることはありませんでした。

「排泄介助」に対する苦手意識や偏見が、
無意識のうちに高齢者介護施設への就職を、我が身から遠ざけていたように思います。

僕にはムリだと思っていました。

が、いきなりCW(ケア・ワーカー)として利用者の排泄介助をすることになり、
今まで自分が避けてきたことに対峙する毎日が始まりました。

愛する私が子のオシメすら、
ろくに換えたことのない超無精者で薄情者の父親失格のこの僕が、
人様の排泄物と格闘することになりました。
人生とはほんとうに不可思議です。

現状、臭覚をOFFに切り替え、決然とオシメをオープンします。

「これは幻なのだ」

「これはこれまでの僕の人生の贖罪なのだ」

「これを乗り越えたら怖いものはなくなるぞ」

と心に念じながら、
多量の排便で汚染されたオシメをごしごしと水洗いしています。

フランクル流に言うならば、
こんなおっさんになった僕が、
今、この場所で、断腸の思いで、
汗水垂らして汚物の洗浄をしていることにも、「意味がある」ということです。


お願いです。

どうか慣れますように!


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プロフィール

あぱあぱ

Author:あぱあぱ
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〇社会福祉士取得

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